「ことのはさやさや」(秋司書) 【文豪とアルケミスト】 2023年12月22日 《2024年1月7日 発行予定》 秋司書短編web再録本 名前あり創作女司書である要杜沙弥ちゃんの乱秋書作品短編集【文庫/32p/¥300】<pixivのサンプル>■BOOTHで買う■b-2FOLIOで買う 【「司書さんのこと」より】司書さんはとても不思議な人だ。 歳の割には達観したところがある反面、歳の割に無邪気で無防備なところもあわせ持っている。 どんな環境で育ったのかは分からないけれど、あまり性別というものを意識していないのか、男性に対して驚く程に警戒心を持っていない。 本人は、「男とか女とかではなく要杜沙弥以外の何者でもないって言われるんですよ」などと笑っているが……それは彼女が誰に対してでも変わらない態度を見せるせいなのかどうかは分からない。 この図書館にいる多くの文士たちも、彼女を女性ではなく特務司書という存在として見ているようで、それも警戒心のなさを冗長させているのかもしれない。 特務司書である彼女の名前は要杜(かなもり)沙弥(さや)。 自称二十五歳の成人女性だ。 仕事中は館長たちと同じ深い緑色のジャケットの制服を着ているが、普段着は華やかで可愛らしい柄の和装や淡い色合いのワンピースやスカートなど、どちらかといえば女性らしい雰囲気のものを好む。 肌と同じく色素の薄い絹糸のような長い髪には、藤色のリボンが結わえられている。 背は僕と同じで一六五㎝あり、女性としては高めのそれに踵の高い靴を履くことを好む。そうやって助手である僕の隣にわざわざ並んでは見下ろしてくるのだ。 彼女を形作る一つ一つのパーツは女性を思わせるというのに、なぜか本人からは女性というものが感じられないと皆が言う。 僕も最初はそうだった。 そう、最初は…… いつからだろう?彼女の一挙手一投足を目で追うようになったのは。 何かしでかさないか心配だから目が離せないんだ……などという言い訳は通用しないことに気づいたのは。「恋、だね」「うわ! びっくりした」 突然気配なく隣に来た島崎の言葉に、僕は飛び上がらんばかりに驚く。「頼むから気配を消して近づかないでくれ」「秋声が司書さんばかり見てるからだよ」 おかわりに立ち上がった司書さんの姿を見ていただけとはいえ、見ていたのは事実だから否定ができない。「それにしても、司書さんはよく食べるね」「どこに入るんだか」 大事そうに持った盆の上には、先程も食べていたカツカレーのおかわりと、今日のデザートであるフルーツ、そして彼女の今月の昼の楽しみであるプリンが載っていた。「秋声、手、止まってる」 指摘されて、食事の手が止まっていたことに気づく。「毎日毎日、飽きもせず司書さんのこと見てるよね」「え?」「司書室で一日の大半一緒にいるのに、食事の時も見てるし……」 僕の隣の席に座り、島崎はじっとこちらを覗き込んでくる。 食事を再開しても、視線は離れない。 落ち着かないからやめて欲しいけれど、そう言ったところで逆に面倒な質問責めに遭いそうだから、今は食事に専念することにした。 PR